BLOG|矯正の本音

矯正歯科に関する正しい知識や情報のご提供、医院の活動のご報告などを連載していきます。

2015.12.18

8020運動:予防と矯正の関係について

メープル矯正歯科の山口です。

今日は予防という観点から歯列矯正について考えてみたいと思います。

「8020運動」というものを聞いたことはありますでしょうか?1989年に厚生労働省が提唱し始めた運動で、80歳までに20本の自分の歯を残そう、そのために日々のデンタルケアを大切にしましょうというものです。本来成人の歯は全部で28本(親知らず含まない)あり、齲蝕(虫歯)や歯周病で抜けてしまい、20本以下になってくると食事を楽しむことができなくなるといわれています。

この8020運動が開始された当初は、8020運動達成者、つまり80歳以上で自分の歯が20本以上残っている人の割合が、8.2%だったそうです。そして80歳以上の方の平均残存歯の数はなんと4.5本。ほぼ自分の歯で食事をすることはできない時代でした。

そんな中少しずつ8020運動が浸透してきて、日々のブラッシングに気を付ける方が増えてきたり、歯ブラシや歯磨き粉の進化などもあった結果、2014年歯科疾患実態調査では38.3%まで来たという嬉しいデータが発表されました。

更に、8020運動の達成者の中には、著しい不正咬合(出っ歯、受け口、デコボコなど)がなかったということが東京医科歯科大学の研究で明らかになったそうです。先に書いたように歯磨き自体の質が上がったこともありますが、この研究から見るとやはり歯並び、噛み合わせに問題があると、ブラッシングが行き届かず、齲蝕から歯周病、抜歯へとつながっていくことも見えてきます。

また、開咬(オープンバイト)の場合は唾液による自浄効果もさがってしまい、齲蝕の可能性が高くなってしまいます。

矯正治療は多くの場合見た目の審美的改善を求められるのですが、こういったデータからもわかる通り、予防という観点でも歯列改善が大きな価値かと思います。

2015.12.13

何歳まで矯正治療を受けられるか?

メープル矯正歯科の山口です。

「何歳まで矯正治療を受けられますか?」という問い合わせを受けることがあります。小児矯正に関して、早いうちから歯列矯正をした方がメリットあるという 話は色々なところで目にするようになりましたが、逆に年齢を重ねていった場合はどうでしょうか?最近は成人の方の矯正治療もかなり増えてきているので、こ の点に疑問を持っている方も多いのではないでしょうか?「いまさら矯正する年齢じゃないですし・・・」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。




結論からいうと、【年齢制限は特にない】と考えます。当院でも60歳過ぎてから治療をしたという方もいます。年齢制限はありませんが、口の中の状態によって難しさがでてくることはあります。


まず歯の動きから見ていくと、この疑問に対して答えがわかってきます。矯正治療は歯にブラケットと呼ばれる矯正装置を付け、正しい歯列の形をした金属のアーチワイヤーを通し、ワイヤーが本来の歯列の形状に戻ろうとする力を利用していきます。


外から見えない部分ですが、歯の根っこ(歯根)という部位が歯茎、歯槽骨(歯が並ぶの土台部分である顎の骨)の中に埋まっています。歯がワイヤーの力に 引っ張られて動こうとする際、この歯根が歯槽骨にぶつからないように破骨細胞という細胞が歯槽骨を溶かしていきます。これを「吸収」と呼びます。そして吸 収が行われているのと反対側の歯槽骨では骨芽細胞という細胞が歯槽骨を生み出していきます。これを「再生」と呼んでいます。つまり、歯列矯正の歯の動きと は、歯槽骨の「吸収」と「再生」によって動いているように見えているということになります。



矯正治療を受けられる年齢制限はありませんが、この吸収と再生がきっちりできる状態である必要はあります。とはいえ突然この吸収と再生がストップすること はなく、代謝の速度が少しずつ下がってくることで、年齢が高くなっての治療はトータルの矯正治療の期間が長くなる可能性は出てきます。

年齢を重ねていくと、歯周病という問題があります。矯正治療が全くできないことがあるとすると、この歯槽骨がすでに溶けてなくなっている場合や、歯槽骨に問題がある場合、ほとんどの歯が歯周病などで抜けている場合などが考えられます。


歯周病以外にも重度の上顎前突(出っ歯)や下顎前突(反対咬合、受け口、しゃくれ)などは、場合によって外科手術が必要になるので、手術の回復力などが年齢的なハードルになる場合もあります。


たしかに年齢が若い方が歯周病のリスクが少なく、歯はスムーズに動いてくれます。
しかし矯正は年齢に関係なく、思い立ったときにするべきと考えています。いわゆる「善は急げ」ですね。若年者と比べると不利な面もありますが、日々の口腔内のケアと定期的な歯周病の管理をしていれば、年齢に
関係なく、矯正治療ができます。

8020運動の調査結果にもありますが、日々の歯磨き、クリーニングなどはとても大切な要素になってきます。常に口腔内のケアをすることで、いざ矯正治療を受ける際に問題なく進められるだけでなく、そもそも歯列矯正を必要としないことにつながるかもしれません。

2015.11.26

ニューヨーク大学矯正コース

メープル矯正歯科の山口です。

すでに一年くらい経ちましたが、昨年の11/20~11/25までニューヨークで、ニューヨーク大学の短期矯正コースを受講しました。2年コースの最終講義でした。

今までは講義中心だったり、コルチコトミー(顎の骨に外科的に切れ目を入れて、歯を早く動かす手法)の実習だったりでした。
最終日の内容は矯正治療に関する講義と自分の症例(2症例)の発表でした。

初日と2日目は講義でした。講師はニュージャージー州で開業しているエプスタイン先生で、小児矯正から成人矯正までの幅広い講義でした。

3日目と4日目はそれぞれ受講生各自の症例発表でした。久々の症例発表で膝の震えがとまりませんでした。でもなんとか無事終了しました。


無事にニューヨーク大学の卒業証書ももらい、卒業となりました。


症例発表に加えて、論文も提出しなければなりませんでした。今回は、裏側矯正(インコグニート)のメカニズムについてまとめました。症例発表の論文はいろいろと発表しましたが、症例発表以外の論文は、北海道大学の大学院以来でした。少々、寝不足の日々が続きました。

無事に卒業でき、ホッとしています。

2015.11.24

上顎前突を子供のうちに治すメリット

メープル矯正歯科の山口です。


前回は上顎前突(出っ歯)の原因や弊害について書きました。下顎前突(反対咬合、受け口)同様、見た目だけの弊害ではなく、開口による口腔内乾燥からくる唾液の自浄効果低下、そしてそこからつながる齲蝕(虫歯)、歯周病リスクまでご紹介しました。また、前歯で噛めないことからくる大臼歯(奥歯)にかかる負担リスクについてはなかなか知られていない問題かもしれません。


今回はこれに対して子供のうちに治療することのメリットについて少し書いてみようと思います。

上顎前突の原因の一つ、舌癖からくる場合をまず考えてみましょう。舌の力により上顎前突になっている場合は、たとえ歯並びを治しても舌癖自体を改善しなくてはまた元の状態に戻ってしまいます(後戻り)。できる限り早い段階に治療した方が、原因となっている「癖」を一緒に改善していくことが出来ます。これは指しゃぶりによる上顎前突にも言えることですが、変な癖が身体に染み付く前に改善していきたいですね。




次に骨格性の上顎前突に関してです。上顎と下顎の骨のサイズの違いや位置のずれによるものです。これに関してはヘッドギアなど様々なアプローチがありますが、キーになっているのは骨の成長がまだ止まっていないという点です。子供のうちに治療を開始できれば、成長の進み具合を手助け(骨の成長を促したり、逆に抑制したり)して、上下のアンバランスを整えながら歯並びを改善していくことが出来ます。大人になって骨の成長が止まってしまっている場合、顎の成長を促しながらの治療が出来なくなってしまい、外科的なアプローチや抜歯が必要になるケースが増えてきます。


もちろん大人の上顎前突治療は必ずしも外科手術が必要になるわけではありませんが、今回は子供のうちに上顎前突の矯正治療を受けるメリットを簡単にご紹介しました。その患者さんにとってベストなタイミングで矯正治療を提供出来ればと考えています。

2015.11.20

見えない裏側矯正は虫歯になりやすい?

メープル矯正歯科の山口です。

日本橋という場所柄、見えない裏側矯正(舌側矯正)、マウスピース矯正などの問い合わせを受けることが多々あります。裏側矯正に関しては特に表側矯正(唇側)と違いインターネット上にネガティブな情報が出ていることもあります。

そんな中よく受ける質問の一つ、裏側矯正は齲蝕(虫歯)になりやすいのか?ということに関してお伝えしようと思います。



矯正治療中に齲蝕(虫歯)になってしまうと、場合によっては矯正装置を一度外して、虫歯治療を行ってから再度矯正装置を付けるということも出てきてしまいます。そのため、裏側矯正だけでなく、表側矯正も矯正治療中には丁寧なブラッシングがとても大切になります。



裏側矯正の齲蝕(虫歯)のリスクというのは、物理的にブラッシングしづらいということからきている心配かと思います。確かに裏側矯正は直接目で見ることが出来ず、表側と比べると難しさはあり、プラーク(歯垢)の沈着やプラークによる歯肉炎(歯茎の腫れ)になりますので、注意は必要です。



しかし、一概に裏側矯正の方が虫歯になりやすいかというと実はそうとも限りません。それは唾液による自浄効果と呼ばれる細菌の増殖を抑える効果がある点です。また表側に比べて空気に触れにくいということからも細菌の増殖が表側ほど早くないという点も考えられます。


ただ、先に書いたように表側矯正にしても裏側矯正にしてもブラッシングは不可欠です。そのため専用のブラシ(頭の小さい歯ブラシ、歯間ブラシ)を準備することや、ブラッシング指導(歯科衛生士による歯磨き指導)を必要とします。また、そもそも矯正治療を受けるという時点で叢生(デコボコ、乱ぐい歯、八重歯)など歯並びに問題があり、歯ブラシが届きにくい部位がある方がほとんどです。そのため、歯列が綺麗になることで、歯磨きがしやすい環境となり、矯正治療後の齲蝕リスクが軽減されます。



矯正治療を終えられた患者さんには歯並びと噛み合わせが改善されたということで喜んでいただけますが、実はその後の歯を健康に維持しやすい状態になるということも忘れてはいけません。結果、虫歯や歯周病を予防し、歯の寿命を延ばすことになります。


少し話がずれましたが、裏側矯正ということだけで虫歯の可能性が上がるということは言い切れないと思います。それは唾液による自浄効果も期待できるからです。ただ、表側矯正でも裏側矯正でも矯正治療中のブラッシングは丁寧にやる必要性があります。特に、唾液の自浄作用があっても装置の周りに歯石が付きやすいことがあり、それがまた磨き残しをプラーク(歯垢)の沈着を誘発してしまうことになります。しかし、また、矯正治療を受けて歯並びの改善がなされると、ブラッシングがしやすくなるというメリットも見逃せないポイントです。

何か気になることがあればいつでもお問い合わせ頂ければと思います。

2015.11.02

上顎前突(口唇閉鎖不全による口呼吸)

メープル矯正歯科の山口です。

今日は上顎前突(出っ歯)について少し書いて見ようと思います。

上顎前突とは言葉の通り、上あごが前に出ている状態を指します。「出っ歯」という表現の方がなじみ深いと思いますが、実は単に上顎前歯が前に出ているだけとも限らないのが上顎前突です。

まずその原因から見てみましょう。

①舌癖による上顎前突 舌癖というのは、文字通り舌の癖のことです。舌が外に出ようとする力が強い場合、舌の力によって前歯が前に出てしまうということがあります。空き歯の方に多くみられるもので、歯と歯の間に舌が入り込もうとして、だんだんに歯を押し出していきます。



②指しゃぶりなどの習慣による上顎前突 舌癖のように一見弱い力でも歯は動いていきます。指しゃぶりが永久歯に生え替わるころまで続いている方など、比較的上顎前突になりやすいといわれていま す。指しゃぶりだけでなく、上顎前突の原因を探っていくと爪を噛む癖があったということもあります。



③骨格性による上顎前突 中には骨格性の上顎前突というものもあります。上あごが極端に大きい場合や、あるいは下あごが極端に小さい場合もあります。上下の顎の前後関係のずれにより上顎前突になっているという症例も中にはあります。



このように原因は様々です。そのうえでどういった弊害が起こり得るかを見てみましょう。

①見た目 矯正治療を受けたい理由として一番多いのではないでしょうか。子供の場合だと、これが原因でいじめにあってしまうという話もよく耳にします。

②怪我のリスク 二つ目が怪我のリスクです。スポーツをされている場合、唇を切ってしまうだけでなく、場合によっては歯が折れてしまうという報告もあります。

③虫歯や歯周病のリスク 上顎前突になると口を閉じることが難しくなります(下顎前突の場合も含む)。口唇閉鎖不全と呼びますが、口呼吸が習慣になってきます。口呼吸の場合、口腔 内が常に渇いた状態になります。唾液には細菌の増殖を抑える働きがあり、乾燥した状態になるとその唾液による自浄効果が下がり、齲蝕(虫歯)や歯周病のリ スクへとつながってきてしまいます。



④大臼歯への負担 前歯が噛み合っていない状態が続くと、食事の際に「噛み切る」機能を大臼歯(奥歯)で代用するようになります。大臼歯への負担が長く続くと歯がすり減って きてしまったり、大臼歯で食べ物を噛み切ろうとして、本来の顎の動きではない動きを続けてしまい、顎関節に悪影響を与えることも出てきます。



3つ目と4つ目のデメリットはあまり知られていないかもしれませんが、とても大切なポイントになります。

ひとえに「出っ歯」といってもこの様に原因も弊害も様々です。今回書いたこと以外でも患者さんそれぞれの状態は全く違ってきますので、気になる方は一度矯正専門医に相談してみてください。

2015.10.28

見えない裏側矯正(舌側矯正)が表側矯正(唇側矯正)より費用が高い理由

メープル矯正歯科の山口です。

近年大人の矯正患者さんが増えてきているような気がします。日本橋や銀座近辺でもブラケット(矯正装置)を付けているサラリーマンの方などを目にするようになりました。矯正のイメージとして、若い女性がするものとか、子供がするものいうイメージがあるかもしれませんが、僕自身は、忙しい男性サラリーマンこそ矯正治療が必要と感じています。当院でも歯並びを気にされて来院されるサラリーマンの方がいらっしゃいます。また、実際には気づけませんが、見えない矯正治療である、裏側矯正(舌側矯正)で歯列矯正治療を受けられる方も増えてきているのではないでしょうか?

今日はそんな裏側矯正に関する疑問で、よく耳にする「裏側矯正が表側矯正より高いのはなぜ?」という質問にお答えしようと思います。

この答えは色々あり、もちろん技術的な難しさから値段を高く設定している矯正専門医も多いと思います。表側と違い、実際ワイヤー交換にかかる時間もかかりやすく、また力のかけ方も表側と逆の場合があるなど、経験がとても大切になります。



しかし、大きな理由の一つに物理的に費用がかさんでしまうものがあります。それは「セットアップ模型」と「ジグ」と呼ばれる装置を作成する必要があるということです。表側の矯正治療の場合は、ブラケット装置を装着する際に、ダイレクトボンディングと呼ばれるやり方を多くの矯正医が採用しています。これは、直接、既製品のブラケット装置を歯に装着する方法で、歯の先端からワイヤーの通るスロットと呼ばれる位置までの距離を確認したり、それぞれのやり方で直接接着していきます。そのため、すぐに治療が開始できます。



これに対して、裏側矯正は直接目で見て接着することが出来ません。そのため、あらかじめ歯が並んだ状態の模型を作成し、更にそこに間接的にブラケットを正しい位置に装着するための「ジグ」と呼ばれる装置をオーダーメイドで作成する必要が出てきます。インダイレクトと呼ばれていますが、歯の裏側に矯正装置を取り付けるためのものです。



これらは当然患者さんそれぞれの歯の形とアーチフォームに合わせて作る技工操作が加わるため、装置を装着するまでにどうしても時間を要してしまいます。そして技工代もかかります。そのため、時間と費用がどうしてもかかってしまうということです。



表側でもインダイレクトというやり方を採用している矯正医もいらっしゃいますが、裏側に関してはほぼ100%このインダイレクトというやり方でブラケットを付けることになります。

費用を考えて上顎のみ裏側矯正にして、下顎をクリアの矯正装置を表側につける(ハーフリンガル)という方もいらっしゃいます。審美性と費用の両方を考えて、矯正専門医と相談してみてはいかがでしょうか?