メープル矯正歯科の山口です。
「何歳まで矯正治療を受けられますか?」という問い合わせを受けることがあります。小児矯正に関して、早いうちから歯列矯正をした方がメリットあるという 話は色々なところで目にするようになりましたが、逆に年齢を重ねていった場合はどうでしょうか?最近は成人の方の矯正治療もかなり増えてきているので、こ の点に疑問を持っている方も多いのではないでしょうか?「いまさら矯正する年齢じゃないですし・・・」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
結論からいうと、【年齢制限は特にない】と考えます。当院でも60歳過ぎてから治療をしたという方もいます。年齢制限はありませんが、口の中の状態によって難しさがでてくることはあります。
まず歯の動きから見ていくと、この疑問に対して答えがわかってきます。矯正治療は歯にブラケットと呼ばれる矯正装置を付け、正しい歯列の形をした金属のアーチワイヤーを通し、ワイヤーが本来の歯列の形状に戻ろうとする力を利用していきます。
外から見えない部分ですが、歯の根っこ(歯根)という部位が歯茎、歯槽骨(歯が並ぶの土台部分である顎の骨)の中に埋まっています。歯がワイヤーの力に 引っ張られて動こうとする際、この歯根が歯槽骨にぶつからないように破骨細胞という細胞が歯槽骨を溶かしていきます。これを「吸収」と呼びます。そして吸 収が行われているのと反対側の歯槽骨では骨芽細胞という細胞が歯槽骨を生み出していきます。これを「再生」と呼んでいます。つまり、歯列矯正の歯の動きと は、歯槽骨の「吸収」と「再生」によって動いているように見えているということになります。
矯正治療を受けられる年齢制限はありませんが、この吸収と再生がきっちりできる状態である必要はあります。とはいえ突然この吸収と再生がストップすること はなく、代謝の速度が少しずつ下がってくることで、年齢が高くなっての治療はトータルの矯正治療の期間が長くなる可能性は出てきます。
年齢を重ねていくと、歯周病という問題があります。矯正治療が全くできないことがあるとすると、この歯槽骨がすでに溶けてなくなっている場合や、歯槽骨に問題がある場合、ほとんどの歯が歯周病などで抜けている場合などが考えられます。
歯周病以外にも重度の上顎前突(出っ歯)や下顎前突(反対咬合、受け口、しゃくれ)などは、場合によって外科手術が必要になるので、手術の回復力などが年齢的なハードルになる場合もあります。
たしかに年齢が若い方が歯周病のリスクが少なく、歯はスムーズに動いてくれます。
しかし矯正は年齢に関係なく、思い立ったときにするべきと考えています。いわゆる「善は急げ」ですね。若年者と比べると不利な面もありますが、日々の口腔内のケアと定期的な歯周病の管理をしていれば、年齢に
関係なく、矯正治療ができます。
8020運動の調査結果にもありますが、日々の歯磨き、クリーニングなどはとても大切な要素になってきます。常に口腔内のケアをすることで、いざ矯正治療を受ける際に問題なく進められるだけでなく、そもそも歯列矯正を必要としないことにつながるかもしれません。