メープル矯正歯科の山口です。
前回は親知らず(智歯)に関して書きましたが、今回は八重歯に関してお伝えできればと思います。
八重歯というと、上顎の犬歯をイメージされる方が多いのではないでしょうか?しかし実は八重歯=犬歯ではなく、正常な歯列から飛び出している歯のことを八重歯といいます。「押歯」「添歯」「鬼歯」など色々な呼び方がありますが、多くの場合は犬歯が歯列からはみ出すケースが多いため、八重歯=犬歯というイメージが定着しています。
そもそも八重歯はなぜ生まれるかというと、大きく分けて二つあります。一つは顎の骨の劣成長からくるものです。歯が並ぶスペースがないことで叢生(デコボコ、乱ぐい歯)などは生まれますが、この八重歯も歯列にきっちりと並ぶスペースがないために本来の歯列からずれて生えてきます。特に上顎犬歯(犬歯はレントゲン写真の「3」の歯です)は最後に生えてくることが多く、スペースが足りないと結果として内側や外側にはみ出して生えてしまいます。二つ目は遺伝的要素です。先天的な歯冠幅や骨格にも左右されます。
この八重歯に関して、一昔前まではチャームポイントとして捉えられてきた傾向がありますが、最近では衛生面、健康面、ケガのリスクなどの面から歯列矯正で治す患者さんが増えてきています。
衛生面、健康面から八重歯を考えると、歯磨きの難しさがまず挙げられます。飛び出した歯のすぐ裏側(舌側)には隣に並んでいるはずだった歯がありますので、当然歯ブラシはうまく届かず磨き残しが発生しやすい状況になっています。この磨き残しがプラークになり、更に歯石へと進んでいきます。結果として口臭の問題や、齲蝕(虫歯)から歯周病につながり、最悪抜歯が必要になってしまうこともあります。
また最近増えてきているのが、ケガのリスクです。激しいぶつかり合いがあるようなスポーツや部活動をやられている子供の患者さんが多く治療するようになりました。ぶつかった際に口腔内を傷つけてしまうというリスクもありますが、場合によっては歯が折れてしまうというケースも報告されています。
更に見た目を気にして八重歯の矯正治療をされる方が矯正歯科医院へ来るようになってきました。上に書いたように八重歯はチャーミングポイントとして捉えられてきましたが、実は欧米諸国ではドラキュラを連想することから敬遠されてきています。海外への留学や、外国の方とお仕事をされる方は特にこれを意識してか歯列矯正を受けるようになってきています。
八重歯の矯正治療に関しては、歯列が正常に並ぶように歯列を広げる治療や、大臼歯を後方に移動する場合、また抜歯してスペースを作るなど様々あります。小児矯正の段階からスタート出来る場合は顎の成長を促すことでスペース確保することもできます。いつまでに八重歯を改善しなくてはいけないということはありませんが、顎の成長をサポートしながらの早い段階の方が非抜歯での治療可能性が高くなります。気になる場合は矯正専門医へ問い合わせしてみてください。