(C) 2020 M.O.C.
CLINIC
院長ブログ
2012.10.12
小児の矯正(すきっ歯の症例)

メープル矯正歯科院長の山口です。

上あご前歯の隙っ歯を気にして来院された小児の患者さん(9歳♀)です。

実は、こういう時期の上あご前歯の隙っ歯は正常であり、異常ではありません。

僕ら歯科医の世界では「みにくいアヒルの子の時期(ugly duckling stage)」と言います。
ただ・・・・あまりいい響きではないので、個人的にはこの表現は好きではありません(^_^;)

7歳ごろ、上あご前歯の永久歯は少し外側にハの字のように生えてくるため、隙っ歯の状態になります。しかしその後、隣から永久歯が順々に生えてきて、最終的には歯が真ん中方向に押されて自然に隙間が閉じるようになります。

今回の患者さんは、検査をしてみたところ、隙っ歯以外にもいろいろ問題がありました。

無料相談では、おおまかなことしか言えません。
細かい状況は、実際に型取り、写真、レントゲン撮影などの検査をしないと分かりません。

写真から分かることとして、①上あご前歯の真ん中はほぼ顔の正中(黄色点線)に一致していますが、下あごの前歯の真ん中(赤点線)は顔の正中より左にズレています。
②下あごの前歯が上あご裏側の歯茎に食い込むくらい深い咬み合わせ(過蓋咬合)であります。成長期に過蓋咬合があると、正常な顎の成長がしにくく、前歯でものを噛みきることはできずに食べるのが遅くなります。


下あごの写真です。赤矢印の部位は、乳歯2本残っており、その下から永久歯2本生えてきます。ところが黄色矢印の部位は乳歯1本残っており、その下から永久歯2本生えてきます。


レントゲンで見ると一目瞭然です。先ほどの話の黄色矢印のところに永久歯が2本生えてきますが、明らかに隙間が足りず、このままだと確実に凸凹になってしまうことが分かります。

本来であれば、乳歯が2本残っているはずなんですが、なんらかの理由で早期脱落したものと思われます。乳歯が1本早期脱落した結果、下あご前歯全体がその隙間に向かって傾斜したものと推測できます。

虫歯で乳歯がボロボロになって抜けた場合、どうせ永久歯が生えてくるから乳歯が抜けても良いというわけではありません。乳歯が適正な時期まで残っている= 永久歯が生える隙間を確保するそういう役割もあります。仮に乳歯が抜けなくても、虫歯がどんどん進行して乳歯の幅が小さくなるとその分永久歯が生える隙間 は失われます。乳歯でも虫歯の治療が必要な場合もありますので、しっかりとかかりつけの歯科医と相談してください。

レントゲンは、外から見えない骨の中の状態がよく分かります。歯の本数(過剰、不足)に異常はないか、永久歯の生える方向に異常はないかなどをみます。
この患者さんの場合、実は上あごの前歯2本が足りません!!ちょうど真ん中から2番目の前歯が2本ありません。そのため永久歯が生えてくるのを待っていても、隙っ歯は治りません。
歯の本数に問題がないかを確かめるためにも、レントゲンは重要となります。


今回はバイオネーターという取り外しの装置で治療を開始しています。上下前歯の真ん中が一致するような咬み合わせで装置を作ります。こうすることにより、 顎がこの位置に成長を誘導させるためです。そして、顎を横に広げて、永久歯が生える隙間を確保します。単純な装置ですが、これ一つでいろいろなことができ ます。


先ほど述べたように上あごの前歯が2本足りないため、隙っ歯は改善しないので、隙っ歯を改善するバネを組み込みました。

治療経過7か月です

深かった前歯の咬み合わせも順調に持ち上がり、前歯の真ん中も一致してきました。


バイオネーターにより顎の拡大も順調で、黄色矢印の部分も永久歯2本が問題なく生えてきました。


決して、検査・診断をしたからといってそこの医院で治療をしなかればいけないことではありません。でも検査をしないと、細かい問題点などが分かりません。
診断したけど、その治療方針でいいのか?などの不安があるかと思います。今は、セカンドオピニオンの時代です。不安があったら、他の医院に聞きにいくのはアリです。

矯正治療は長いお付き合いになる治療です。安心して治療をしてもらえる医院がベストと思っています。