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CLINIC
院長ブログ
2017.2.14
非抜歯治療の可能性とリスク

こんにちは。
メープル矯正歯科の山口です。

今回は非抜歯による治療の可能性とリスクについてご紹介していきたいと思います。抜歯か非抜歯かというのは長年の間矯正歯科学会でも議論され続けていますが、これという正解はないというほど難しい問題ではあります。そのため私達も患者さんにとってベストな状態に近づけていく様に診断をして、皆さんにご案内をさせていただいております。

ではなぜ抜歯が必要になってくるのでしょうか?一概に皆さんが同じ理由というわけではありませんが、一番多い理由としては歯を並べるスペースが無いということが挙げられます。近年では食べ物が柔らかくなったりしてきている影響もあり、顎の小さい患者さんがよく来院されます。顎が小さいと歯が並ぶスペースが足りなくなってしまい、歯が並びきれずに重なって生えてきて叢生(デコボコ、八重歯、乱ぐい歯)になったり、回転した状態で生えてきたり(捻転)します。この叢生や捻転を治療するためにスペースを確保していく一番簡単な方法が抜歯というわけです。

とは言いましても、この理由からするとほぼ全ての患者さんに抜歯は必要になるのでしょうか?答えとしては「NO」です。非抜歯で十分治療していくことが可能な方もいらっしゃいます。非抜歯治療ではどの様にスペースを確保していくかと言うと、アーチフォーム(歯列弓)を広げる方法、奥歯の遠心(後方)移動、IPR (歯の幅をやすりで狭める)などといった方法があります。アーチフォームを広げるというのは、Uの字型の歯列を横方向に広げてスペースを確保していきます。奥歯の遠心移動とは、奥歯(第二大臼歯または親知らず)の後ろに歯をずらしていき、歯列全体でスペースを確保していきます。またIPRとは、歯の側面を少しずつ削って歯のサイズを小さくする方法のことを言います。この様に非抜歯でも方法はいくつかあるのですが、どれもスペースの確保できる量には限界があります。この確保できる量内で治療が出来るかどうかが、抜歯・非抜歯治療のひとつの分かれ道になっています。


歯列弓拡大


奥歯の遠心移動


IPR

では無理に非抜歯で治療するとどの様なことが起こるかというと、顎の中で歯が並びきらずに上下の歯が前方に出てしまい、上下顎前突という横から見ると常に唇が前に出ているような状態になります。この状態は唇にとっても自然な状態ではなく、口を閉じようとすると歯を抑え込むような力がかかってしまいます。その結果、歯が唇に押されてまた歯列が乱れてしまう後戻りという事態も引き起こしかねません。

当院でもやはり非抜歯を希望する患者さんは多く、私たちも出来る限り患者さんの希望に添えるように全力を尽くしております。ただ先にお話しした通り、全て要望に沿うことが出来ないということもあります。この治療が可能かどうかということを調べるために私たち矯正歯科医は患者さん皆さんの検査・診断をしているというわけです。ですので、まずは皆さんの歯列の状態を確認し、治療の可能性を知るという意味でもきちんとした診断が可能な矯正専門医に相談してみてはいかがでしょうか。